私は10年来のGSW(ゴールデン・ステイト・ウォリアーズ)のファンなんですが、なぜウォリアーズが好きなの?と聞かれることがあります。
初めてウォリアーズの試合を見たのは高校生の時、当時第8シードながら第1シードのマブスを下したり、バロンデイビスやスティーブン・ジャクソン、ジェイソン・リチャードソンらを擁しラン&ガンオフェンスで点を取りまくったりと、派手なバスケットに魅了されてしまったのがきっかけです。
2007年当時は、第8シードが第1シードに勝つというアップセットは、プレーオフが全て7試合制になってからは初の出来事でした。マブスはシーズンMVPのノビツキーがいて圧倒的な強さでしたし、誰も勝つとは思っていませんでしたね。
と言いつつ、今みたいに優勝が狙えるほど強いチームではありませんでした。得点も多いがそれ以上に失点が多く、さらにはインサイドに良いプレイヤーがおらず、当時のトレンドであった”ディフェンス重視“,”ペイント内での支配力“が全くといっていいほど無かったんです。まさに「時代の流れに逆らったチーム」でした。
さて、月日は経ち現在ウォリアーズは押しも押されぬ強豪チームになったのですが、そこには今お話ししたNBAの「トレンド」が深く関係していると思います。今回はそのトレンドを探っていきたいと思います。
まずは10年前のNBAファイナルを振り返ってみる
まずは10年前のトレンドはどうだったか、を見るために手っ取り早く当時のファイナルを振り返ってみます。
05~06シーズンファイナル マイアミ・ヒート4-2ダラス・マーベリックス
シャックことシャキール・オニールが唯一レイカーズ以外で優勝したこのシリーズ。
第1戦〜第5戦までは完全な内弁慶シリーズで、それぞれホームチームが勝利。
ヒート3勝2敗で迎えた第6戦に、敵地でマブスを下し初優勝を決めました。
ファイナルMVPはドウェイン・ウェイド。シャックも攻守でインサイドを支えました。
06~07シーズンファイナル サンアントニオ・スパーズ4-0クリーブランド・キャバリアーズ
4年目になりリーダーとしての風格が出始めたレブロン・ジェームズを擁しファイナル初出場を決めたキャブスと、レギュラーシーズンはウェスト3位通過ながらビッグ3を中心にベテランの老獪さでプレーオフを勝ち上がってきたスパーズ。
キャブスの勢いがどこまで通用するかが見ものでしたが、スパーズの円熟味溢れるプレーが随所に見られ、スイープという結果に。
MVPはトニー・パーカーでした。
10年前のファイナルから分かること
この振り返りから何が分かるか、それは10年前の優勝チームにはペイント内で決定的な仕事が出来るインサイドプレイヤーがいるということ(ヒートにはシャック、スパーズにはダンカン)。それに加え、彼らのようなインサイドプレイヤーがMVPではないということ、の2点と考えます。
ちょっと待て、いくらインサイドにいい選手がいたからといって、ファイナルでMVPを取るのは簡単ではないんじゃないか、と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
ではここで、99~00シーズンから04~05シーズンまでのファイナルMVPをずらっと並べてみます。
98~99シーズン ティム・ダンカン(1)
99~00シーズン シャキール・オニール(1)
00~01シーズン シャキール・オニール(2)
01~02シーズン シャキール・オニール(3)
02~03シーズン ティム・ダンカン(2)
03~04シーズン チャウンシー・ビラップス(1)
04~05シーズン ティム・ダンカン(3)
※(数字)は受賞回数
ご覧の通り、7シーズン中6シーズンでインサイドプレイヤー(それも2選手!!)でファイナルMVPが占められているのが確認頂けると思います。
シャックとダンカンが偉大な選手だったことは疑いようがなく、また彼らの所属チームがとても強かったこともあるかもしれませんが、2000年前半までは”ペイント内を支配することがゲームを支配することに繋がっていた”ことは明白でした。
一時代を築いたこのNBAのトレンドは、ルール改正もあり、彼らのようなインサイドプレイヤーがMVPを取れなくなった10年前くらいから、徐々に弱まりを見せていきます。
近年のトレンド
近年は3Pシュートの多投に代表されるオフェンス志向がトレンドとなっていますが、その流れを作ったのは間違いなくステファン・カリーとスティーブ・カーHDと言えるでしょう。
ステファン・カリーのNBAキャリア
ステファン・カリーは2009年のドラフト全体7位指名でウォリアーズ入り。ルビオら他にも良い選手がドラフト候補に挙がっていましたが、当時のドン・ネルソンHDが獲得を熱望したと言われています。
その後ドン・ネルソンHDの志向するらラン&ガンバスケットにフィットし、徐々にNBAのスター選手としての階段を登っていきます。
12~13シーズンには1シーズンで3Pを272本沈め、レイ・アレンの持つ1シーズンでの3P成功数記録(269本)を塗り替えます。ウォリアーズもこの年第6シードで6年ぶりにプレイオフに出場(冒頭で触れた、あのマブス相手にアップセットした時以来の出場ですね)を決めますが、プレイオフ1回戦敗退。翌13~14シーズンも同じくプレイオフ1回戦敗退という結果でした。
スティーブ・カーHD就任後のウォリアーズ
14年にウォリアーズのHDに就任したスティーブ・カーは、マーク・ジャクソン前HDの路線をうまく引き継ぎ、67勝15敗という好成績を収めます。そのままファイナルまで進むと、レブロン率いるキャブス相手に4勝2敗で勝利。見事ウォリアーズを40年ぶりのチャンピオンに導きます。
その翌年15~16シーズン、ウォリアーズはファイナルでキャブスに敗れ2連覇はならなかったものの、レギュラーシーズンでは73勝9敗とし、あのブルズが95~96シーズンに達成した72勝10敗というNBA記録を塗り替えます。
またこのシーズンは、カリーが自信の持つシーズン3P記録を402本と大幅に塗り替えたシーズンでもありました。
16~17シーズンもウェスタン・カンファレンスのプレイオフをなんと無敗(ブレイザーズ・ジャズ・スパーズと3連続スイープ)で駆け上がると、3年連続となったキャブスとのファイナルも4勝1敗で圧倒。2年ぶりのチャンピオンとなりました。
ウォリアーズの強さの理由
なぜウォリアーズがここまで劇的に強くなったのか、要因はいくつもあります。
スプラッシュ・ブラザーズの存在、優秀なベンチメンバーの存在、KDの移籍、スモールラインナップをしけること(=誰でもスイッチ・ディフェンスが可能)などなど、挙げればいくらでも出てきそうですが、ここでは2点。
3Pシュートの成功数
先ほど触れたシーズンの3Pシュート成功数ですが、ここでランキングをご覧頂きます。
NBA&ABAシングルシーズンリーダーと3-Ptフィールドゴールの記録
なんとTOP5をスプラッシュ・ブラザーズが独占。TOP10まで見ても10人中のべ7人と、まさにランキングを支配しています。彼らは成功数もさることながら、成功率も素晴らしいので、敵チームにとっては驚異でしょう。
さらにデュラントやグリーン、さらにはイグダーラなど他にも3Pシュートを打てるメンバーが揃っています。これがリーグを代表する得点力(オフェンス力)の根源と言えます。
スモール・ラインナップ
一口にスモール・ラインナップといっても、ウォリアーズのスモール・ラインナップと他チームのそれでは明確な違いがあります。
まずオフェンスをクリエイト出来る人間が多いこと。通常はポイント・ガードの役割ですが、カリーの他にもグリーンやイグダーラなどこれを担える人材が揃っていることが挙げられます。どこからでも、誰を起点にしてもオフェンスを展開出来るんですね。
次に、インサイドの使い方とパス回しです。
ミスマッチや1on1などが無いわけではありませんが、ポストアップをする場面が圧倒的に少ないです。その代わり、ドライブやカットなど、外→中への動きがとても活発で、インサイドへのカットインからパスアウト、といったように外→中→外のパスの周りがとても早いです。もちろんパスの巧さという資質がメンバーに備わっていることはいうまでもありません。
ウォリアーズの強みが近年のトレンドに
上述したウォリアーズの強みですが、これが近年のトレンドであると言っても過言ではないでしょう。
ロケッツやキャブスなど、ウォリアーズ以外のチーム(かつNBA上位チーム)も3Pシュートに力を入れており、アテンプト数は年々増加傾向にあります。
また、こういったチームは必然3Pシュートを打てる選手が多くロスターに入っており、バックコート陣に厚みを持たせる傾向としても現れています。
後半へ続きます。
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